文カジ 3章目

3章 完璧な主部と述部

(問1)
 異国のスーパーに寄ってみる。今どき知らないものは多くない。ただ食べ方がわからないものが多い。わからないなら試してみる他ないだろう。おすすめのとおりに一束の二十日大根を量る。一番小さいサイズのバターを手に取る。バターも味が色々ありすぎだ。海藻入りなんてどうかしている。見当がつかなくて、一番小さいのを選ぶ。粗塩入り? どうでもいい、小さいのがいい。ホテルで洗ってナイフで大根を割る。バターもついでにそのまま削ぐ。削いだ半身を補うようにバターを乗せてやる。赤白の白をうす黄色で塗り変えたみたいだ。バターの山盛りを見ると罪悪感が強すぎる。そしてそのまま一口で膨らみを口にいれた。乳臭さが意外とすっきり大根ですすがれてうまい。もう一つ、くわしく知りたくてもう一つと消えていく。罪悪感も辛味ですすがれるんだろうか。でもこれって本質的にはサバと大根の関係と同じだ。脂と大根の組み合わせのバリエーションに過ぎない。なんとなくここでも暮らしていける気がしてきた。

メモ:講評でラディッシュバターを知っている方がいなかった。

(問2)語りのみを1文で
ああわかっているんです、みんな同じことをいうんですだってみんな罪にはとわれたくないですからね、全部こっちでは把握しているんですでも本人かどうかの確認が必要だ、ええ読み上げますあなたの住所、氏名、電話番号、これらすべて、一致しているということは法的にはあなたが責任を追うことになるんです、責任ってわかりますか、あなたの罪の重さが、あなたが何をしたのか理解できていますか、あなたはしていないというけれどあなたがしたのとこれは同じ意味になるんです、だってさっき確認したあなたの住所、氏名、電話番号、一致しているんだからあなたが実際にしていなくてもあなたがしたことになるんです、法でそう決まっている、銀行はいま本人確認に躍起なんだ、あなたみたいな犯罪者がどうこう細工するよりもあなたが口座を作ったことなんて明白だ、それに法人が嘘を付くわけがない、あなたはつくだろうけれど、容疑者なんだそれくらいして当然だ、容疑者なのだからきちんと罪の意識を持っていただきたい、あなたの住所と、名前と、電話番号でつくったあなたの口座に被害者は振り込んだんだ、そのときそこに住んでいたとか関係ない、だからあなたはそのお金を受け取っている、詐欺であつめたお金をね、その被害者が払ったお札の番号と押収されたお札の番号がおんなじなんだ、お札にはすべて番号が振られているんだから資金洗浄なんて絶対捕まるのわかっているかい、わかってないからこうして電話をしているんだ、いいからさっさと出頭して詳細を聞かせてくれ、でてこれないなら逮捕しかないだろうだってそのためにこうしてあなたに電話で取り調べをしているんだ、自分の罪がわかっているのか。

メモ:この締切の日に劇場型犯罪というか振り込め詐欺の電話をうけて警察に通報する機会があり、ついそのエッセンスを使わせてもらった。